ジチタイワークス

新潟県三条市

10年間で46億円ものコストを削減!三条市を先導に業務システムを共同化

行政改革の取り組みを発表する「行革甲子園2018」。新潟県三条市が発表した「情報システムの共同化」は、141もの事例のなかから最終審査まで残り、プレゼンテーションは大きな評価を受けた。

※下記はジチタイワークスジチタイワークスVol.7(2019年9月発刊)から抜粋し、記事は取材時のものです。
 [提供] 新潟県三条市

業務内容は同じなのに個別にシステムを導入

全国には1741の市区町村があり、どこも税や住民基本台帳などに関する共通の基本業務がある。それをサポートするのが情報システムだ。実は、どの市区町村も業務内容は同じなのに、システムは別々に導入して、それぞれ費用負担しているという現状がある。

三条市も平成17(2005)年の市町村合併時に、総合住民システムや財務会計システムなど、多くの情報システムを導入。平成26(2014)年にシステム運用の期限を迎え、そのタイミングで県内での共同クラウド化を考えた。

共同化は経費の大幅削減だけでなく、人員削減・業務負担軽減、浮いた費用を使っての住民サービスの展開など、さまざまな成果が期待できる。知っていながら導入しない手はない。

三条市はシステム調達・運用の知識や経験から、共同化の指揮を取ることに。まず県内28市町村のITコスト抑制に向けた情報システム最適化研究会を立ち上げ、事例研究を始めた。次に費用対効果の検証のため、共同化検討会を設置。県内14の自治体が参加した。

職員の不安や業者の圧迫で導入自治体数は減少

共同化を進めるにあたり、職員からは不安の声が上がっていた。「今までの業務の進め方を変えたくない」「余計な仕事が増える」「ITに詳しい職員がいない」。変化が生じることへの不安や拒否感が根強かったのだ。そこに、取引先の減少を懸念するシステム業者が追い討ちをかける。「共同化すれば手厚いサポートがなくなる」「たいした経費削減にはならない」。高額なデータ移行費を提示する業者もいた。

結果、共同化にふみきったのは三条市をはじめ、長岡市、見附市、魚沼市、粟島浦村の5自治体のみ。総合窓口や被災支援、マイナンバー対応など住民情報系の42業務において、システム共同化がスタートした。当時、長岡市の人口は約28万人、粟島浦村は約350人と、人口格差がありながらも、42業務という全国一の規模で共同化を実現したのだ。その効果も大きく、5自治体が個別でシステムを使う場合は10年間で93億円のコストがかかるが、共同化すると47億円と、約50%もの経費を削減している。


さらなる共同化を推進新サービスの展開も

これを受けて、他システムでも共同化を実施。財務会計システムでは6自治体で約65%(10年間で約4.4億円)の削減、eLTAX・国税連携システムでは13自治体で約86%(5年間で約1.8億円)のコスト削減につながった。市は今までコスト面から導入できなかったマイナンバー関連のサービスや窓口対応の時間短縮の仕組みなどを、浮いた費用を使って展開した。住民を考えると共同化しない理由はないという事実の証明に、三条市は成功したのだ。

How To

01悔しさをバネに

住民情報系システムの共同化は、検証の結果、多くの団体で効果が見込めたが、システム業者のネガティブキャンペーンや職員の拒否感などで5自治体のみでの導入となった。その後、さらなる自治体の巻き込みや、他のシステムの共同化に成功。

02職員の不安払拭

職員からは、「ITに詳しくない」「余計な仕事が増える」などの声があがっていた。だが、ITに詳しい職員が少ないからこそ、複数の自治体で団結すべき。仕事のやり方は変化するものなので、全体の負担削減につながるチャンスだと考え方を変える。

03反対する業者に押されない

業者にとっては、取引先が減ってしまうので共同化は避けたい。「サポートがなくなる」「費用は変わらない」「データ移行費が高額になる」といった、業者による囲い込みがなされることも。業者に怯まずに、住民のためにも共同化を進めるべき。

04時期をずらしての導入

導入は一斉にではなく、各自治体のシステム更新時期に合わせた。三条市と粟島浦村は平成27(2015)年1月、魚沼市は同年7月、といったように、各自治体の希望時期に導入できるようにしたので参加を示した自治体も多かった。


05住民をいちばんに考える

共同化に反対する職員がいても、反対する住民はいない。今回の共同化で、浮いた費用を使って今までコストの面で導入を断念していた新サービスを展開し、市民サービスの向上につなげている。全ては住民のために信念を持って取り組むことだ。

Results

14自治体で検討を始め、5自治体に減ってしまったのは今でも悔いが残ります。しかし、大きな成果をあげ、他自治体を巻き込むことにも成功しました。苦労はいっときだけで、長期的には大きなメリットを得られます。

(左:三条市 情報管理課 石月 貴さん、右:山澤 浩幸さん)
 

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